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ホルモン剤投与の牛肉

輸入関税率の引き下げに伴い、米国産牛肉の輸入が増加しており、スーパーでも米国産の牛ステーキを最近よく見かけます。消費者にとっては価格が安い牛肉を買えるのはありがたいことかもしれませんが、「合成肥育ホルモン剤」としてエストロゲンなどの女性ホルモンを投与されて育てられている米国産牛肉が日本に輸入されているのをご存知でしょうか?合成肥育ホルモンを投与した家畜の肉を食べることが安全であるかどうかについて因果関係の立証は難しそうですが、EU諸国では肥育ホルモンを使用して育てた牛肉の輸入を一切認めていません。事の発端は、1970年代半ばから1980年代初めにかけて、プエルトリコなどで幼い女の子の乳房が膨らむ、月経が起きるなど、性的に異常な発育が続出。その原因がアメリカ産の牛肉に残留した合成肥育ホルモン剤『ジエチルスチルペストロール』だとされ、アメリカでは1979年に、ヨーロッパでは1981年に使用が禁止されましたが、似たような合成女性ホルモンは使用され続けてきました。そこでヨーロッパでは家畜へのホルモン投与反対運動が起こり、1988年に使用の全面禁止、1989年には合成女性ホルモン剤を使用したアメリカ産の牛肉などが輸入禁止になりました。その結果、EUがアメリカから肉の輸入を止めて7年で、EU諸国の多くで乳がん死亡率が20%以上減り、なかには45%近く減った国もあったそうです。日本でも国産牛肉とアメリカ産牛肉の残留エストロゲン濃度を計測、比較した研究があり、無作為に札幌市内で購入した牛肉の残留ホルモン濃度を検査したところ、アメリカ産牛肉から国産と比べて赤身で600倍、脂身で140倍ものエストロゲンが含まれていたそうです。
日本では乳がんが年々増加しており、1981年には4100人ほどだった乳がんによる死者が、2017年には14000人を超えています。また、3064才の女性では死亡原因のワーストワンにもなっています。さらに、乳がん患者の年齢層も欧米諸国と違い、肥育ホルモン剤入り牛肉を禁輸しているEUでは70代に1つピークがあるだけですが、日本人の乳がん・子宮体がん患者の年齢分布を見ると、50代と70代にかけて2つのピークがあるグラフになっています。要は若い世代に乳がん・子宮体がんの患者さんが日本に多いということです。ホルモン剤を使用した牛肉を育てている米国でも、乳がんによる死亡率が13年までの20年で36%下がった一方、日本では逆に33%上昇しています。なぜホルモン剤を使った牛肉を育てている米国では乳がんの死亡率が下がるのか不思議に思うかもしれません。一つは米国では検診受診率が高くで早期発見治療していることが関係あるようです。ちなみに、2015年の日本の検診受診率は41%と米国の80%や先進国平均の61%を大きく下回っています。二つ目の理由ですが、アメリカ人の牛肉消費量が大幅に減少し、かつもホルモン剤を使った牛肉を食べることを嫌っていることが挙げられます。米国での牛肉の消費量が1976年に1人あたり年間40kgほどだったのが、2018年になるとそれが肉全体に占める割合は2割を切り、1人あたり20kgほどしか食べなくなっているとのこと。また、牛肉を食べるとしても経済的に余裕のある層は、「オーガニック」とか「ホルモンフリー」と表示したものを買う人が多く、ホルモン剤を投与された牛肉を食べないようにしているそうです。
因果関係の立証が難しい、明確な証拠がない、からと言って安全だとはいいきれません。このような事実があるならば、ホルモン剤を使用している牛肉やそれを使った牛丼やハンバーガーを大量に食べるのは控えた方がよさそうに思います。