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脳脊髄液減少症ではありません

頭痛・嘔気・気分の落ち込みなどを主訴として受診された患者さんが、「自分は脳脊髄液減少症だがブラッドパッチの治療はしていない」と言われていました。よくよく聴くと、脳脊髄液減少症の確定診断は受けていません。単純MRI検査の結果は異常なし、症状の原因は不明、精神的なものではと医師にいわれているとのこと。なんで脳脊髄液減少症だと思うのかと尋ねると、頭痛・嘔気の症状で整体に行ったら「脳脊髄液減少症では?」と言われただけのことでした。案の定血液検査をするとフェリチンが測定不能でした。
若年女性の頭痛の原因の第一位は鉄欠乏です。ある程度の年齢になるとくも膜下出血や脳腫瘍などの器質的疾患を念のために除外しておいたほうがいいです。診断の手順ですが、まず一番コモンな疾患を考えないといけません。「突拍子もない疾患を所見に記載するのはダメだ」と放射線科の研修医の時に指導医の先生に教わりました。医学部時代に医師国家試験の勉強を友達と一緒にするのですが、ある友達はいつもへんな回答を選んでいました。彼はやはり1回国家試験に落ちました。私のころはなかったですが、医師国家試験にも禁忌問題というのがあり、選択してはダメな問題をいくつか選択すると不合格になるそうです。診断には常識が必要で、日常診療でよく遭遇する疾患をまず考え、該当しなければ頻度の少ない疾患を鑑別に挙げて精査をしていくことが大切です。脳脊髄液減少症は頻度的にはレアな疾患です。いろいろな検査をしたけれど異常がなかった場合に考える疾患です。
頭痛・嘔気でお困りの方は鉄欠乏の可能性が大です。一般的な病院で原因不明と言われてお困りの方は是非ご相談ください。