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岡山県教委による起立性調節障害ガイドライン

岡山県の教育委員会が、思春期の子どもに好発する病気「起立性調節障害(OD:Orthostatic Dysregulation)」が不登校の要因の一つになっているとして、学校や家庭向けの対応ガイドラインを作った、とNHKのニュースで放送していました。ガイドラインでは起立性調節障害について、自律神経の不調からくる身体の病気で、循環系や自律神経機能の調節不全により、脳や全身に必要な血液が行き渡らないので、立ちくらみ、動悸、朝起き不良、倦怠感や頭痛・腹痛などの様々な症状を呈する病気と説明しており、ODによる朝の不調が不登校の初期症状と似ているため、精神的な問題と考えられたり、「怠け」や「さぼり」と誤解されたりして、辛い思いをすることもあるので、ODについて早期に把握し適切な対応をするために、正しく理解し応援するためにガイドラインを作成したとのこと。
なまけ病ではないということが認識されてきた背景に、発症人数が最近増えてきていることも関係があるのではないかと思います。ガイドラインでは、軽症例も含めると小学生の5%、中学生の10%に存在し、女子は男子より2割ほど多く、小学校高学年から多くなり、中学生で急増すると書いてあります。原因ははっきりしていませんが、現代の夜型社会、運動不足や複雑化した心理社会的ストレスが背景にあると言われているとも書かれています。
原因がはっきりしないと書かれていますが、分子整合栄養医学的には原因はずばり栄養欠損です。思春期には身体が大きくなるのでタン白質、鉄、カルシウムなどの栄養の需要が大幅に亢進します。現代っ子はパン、麺類、お菓子が好きで肉や魚をあまり食べませんので、潜在性の栄養欠損状態にある子どもが多いのです。鉄は脳神経伝達物質の合成やエネルギー産生に欠かせません。また粘膜の材料としても重要です。ガイドラインに書いてらるODに見られる立ちくらみ、動悸、朝起き不良、倦怠感や頭痛・腹痛などの症状は鉄不足による症状で説明がつきます。貯蔵鉄フェリチンが増えればこれらの症状は解決します。男子は成長が止まると鉄などの栄養の需要が落ち着くので自然にフェリチンが増えて元気になることが多いですが、女子は月経が始まるのでさらに調子を崩すケースが多いように感じます。
残念ながら小児科医に鉄欠乏でODが起きるということを知っている人は殆どいません。なぜなら、医学部でそのようなことを学んでいないこと、フェリチン値の基準値に問題があるので鉄不足の正しい診断ができていないからです。またフェリチンを増やすには保険の鉄剤ではなかなか難しい(吸収率が悪く活性酸素を発生させ胃腸障害が起きるから)ですし、貧血でない(ヘモグロビンが基準値内にあり鉄の貯金だけ少ない)のに鉄剤を処方することができないという保険の制約もあり、一般的な医療機関ではうまく治療がいきません。私のブログを読んだ親御さんがフェリチンを測定してほしいと主治医に頼んでも、フェリチンなんかODとは関係ない、フェリチンは基準範囲内にあるから鉄不足ではない、と言って取り合ってくれなかったと言われることも多いです。
昇圧剤や漢方薬では鉄欠乏は是正されません。自費治療になりますが治療用のヘム鉄の摂取を数か月~半年されると殆どの子はまた登校できるようになりますので、起立性調節障害でお悩みの保護者の方は是非とも分子整合栄養医にご相談ください。