加齢性黄斑変性症

加齢性黄斑変性症(age-related macular degeneration)は、加齢とともに網膜の中心部である黄斑が変性を来たす疾患で、加齢による萎縮型と滲出型(本来存在しない新生血管が伸び、新生血管はもろいので血液が黄斑に漏れ出して黄斑機能を障害)に分けられます。

症状としては、見ようとするものが見にくくなったり、視界がゆがんで見えたり、中心部がぼやけて見えたりします。適切な処置をしないと視力が低下し失明に至る可能性の高い疾患です。アメリカでは4人に1人が罹患し、そのうちの半数が失明しており、成人失明原因の第一位にあげられます。虹彩の色が薄く紫外線の影響を受けやすい白人に多く見られましたが、日本でも患者数がこの10年間で倍増し、失明原因の第3位になっています。最近では30代~40代の若年者の発症も増えてきています。また白内障の手術を受け、眼内レンズを挿入している方は、紫外線による活性酸素のダメージを受けやすいので黄斑変性症の発生リスクが高まります。

治療ですが萎縮型には治療方法がないと言われています。浸出型には新生血管に対してレーザー光凝固や光線力学的療法(PDT)などが主に行われていますが、これらは新生血管の処置をするだけの対症療法にすぎません。網膜にはルテイン、黄斑部にはルテインの異性体であるゼアキサンチンが特異的に存在し、黄斑はゼアキサンチンで成り立っていると言っていいほど高濃度に存在していますが、黄斑変性症の患者さんは黄斑部でゼアキサンチン濃度が減少しています。

ルテイン、ゼアキサンチンはビタミンAの一種のカロチノイドで、有害な紫外線のフィルターとなり、また一重項酸素(フリーラジカル)の消去剤としての作用があり、短波長の光やフリーラジカルを中和し、網膜の損傷を抑制していると考えられています。黄斑変性症はフリーラジカル障害(活性酸素)による疾患と言えます。黄斑変性症の予防及び治療にルテイン・ゼアキサンチンの摂取が有効です。ルテイン・ゼアキサンチンを十分量摂取することで黄斑部が回復することが米国のNIH(国立衛生研究所)の研究でも認められています。黄斑変性症と診断された場合、できるだけ早期に十分量のルテイン・ゼアキサンチンの摂取が非常に重要になってきます。
糖尿病のある場合は、症状が悪化しやすいので、ビタミンC・ビタミンEによる抗酸化アプローチも重要です。また喫煙者は非喫煙者に比して発症リスクが2.5倍になるという報告もありますので禁煙も重要です。