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ビタミンAは悪くない

最近ビタミンD不足が、不妊症・自己免疫疾患・アルツハイマー型認知症・乳癌・糖尿病などの一因になっているということがよく報告されるようになっています。ビタミンDはよい意味で今注目されている栄養素と言えます。しかし、ビタミンDはビタミンAと同様に、細胞の中にある核内受容体に結合し特定の遺伝子を活性化させます。ビタミンAの摂り過ぎで妊婦さんでは奇形の危険性があると言われるのも、脳・神経・循環器・消化器・生殖器などの主要な器官が形成される妊娠初期の胎芽器に、ビタミンAを摂り過ぎると遺伝子に対して過剰に作用してしまうことを恐れているためと思われます。ビタミンA活性を示すものは、レチノール、レチニルエステル、レチナール、レチノイン酸と複数あります。これらのうち遺伝子に作用するビタミンAはレチノイン酸ですので、レチノイン酸の過剰摂取は問題が起きるかもしれません。しかし、天然のレチノールはレチニルエステル、レチナールに交互に変換され、レチナールの一部が必要に応じて酸化されてレチノイン酸になりますので、合成ビタミンAのように遺伝子に過剰に働きかけることはありません。
ビタミンAが欠乏すると、子宮上皮の角化や精巣の萎縮を生じ、不妊や流産の原因になります。ビタミンAは母乳、特に初乳に多く含まれています。赤ちゃんの成長に必要だから母乳に含まれるわけです。ビタミンAはおなかの中の赤ちゃんの細胞の分裂・分化にも欠かせませんので適量摂取しないと逆に奇形のリスクが高まります。
このようなビタミンAの働きを理解すれば、癌・不妊・アトピー性皮膚炎・乾癬などの治療においてビタミンDだけでなくビタミンA(天然のレチノール)の摂取も重要であることがお分かりいただけるかと思います。