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糞便移植

糞便移植とは健康な人の便に含まれている腸内細菌を、クロストリジウム・ディフィシル感染症、クローン病、潰瘍性大腸炎などの腸の疾患の患者さんに投与する治療法です。これらの疾患は腸内細菌叢の乱れが関与していると考えられているので、健康な人の腸内細菌を十二指腸や大腸に散布して腸内細菌叢を健全化し病態を改善するそうです。私も以前ある先生から糞便移植をいっしょにしませんかとお誘いを受けたことがありますが、対象となるような患者さんが当院にはいませんのでお断りしました。
米食品医薬品局(FDA)は613日、糞便移植を受けた患者で死亡例が発生したことを発表し、糞便移植には重篤な感染症のリスクを伴う可能性があると警告を出しています。FDAによりますと、臨床試験で糞便移植を受けた患者さんのうち2人が、便の移植を介して多剤耐性菌に感染し、重篤な感染症を発症し、このうち1人は死亡したそうです。糞便移植に用いられた便中に多剤耐性菌が含まれていたためと思われます。
私個人としては他人の糞便を十二指腸や大腸に散布されるのは抵抗があります。腸内細菌叢の乱れが問題なら、まず抗菌ハーブなどで悪い菌を減らし、次に加熱処理乳酸菌・有胞子乳酸菌・宮入菌などのプロバイオティクスやラクトフェリン・オリゴ糖・食物繊維などのよい菌を増やす作用のあるプレバイオティクスを内服することで腸内細菌叢を健全にする方法でよいのではないかと思います。腸内細菌叢の乱れは、クローン病や潰瘍性大腸炎だけでなく、アトピー性皮膚炎、乾癬、リウマチなどの発症とも関連があると考えられています。悪玉菌の好きな砂糖を控え、プレバイオティクスを含む食材を食べ、プロバイオティクスを補給することでこれらの疾患の予防・改善につながると考えています。