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ヘモグロビンだけで判断してはいけません

患者さんに問診していると、「他の医療機関で血液検査した際にフェリチンが基準値以下だったけどヘモグロビンが基準値内にあるので鉄を補充する必要がない」と言われました、と答える方が時々います。ヘモグロビン、フェリチン、鉄に関して無知な医者が多いのに呆れます。基準範囲というものに惑わされているというか、生化学や統計学の勉強不足というか、いずれにせよこの考えは間違いです。
鉄の3分の2はヘモグロビン合成に使われます。しかし、鉄はヘモグロビン合成以外にもいろいろな重要な役目があるのを医学部で学んでいないのでしょう。私も学生時代授業をさぼってばかりでしたので、開業して生化学の勉強をして知りました。鉄は脳内に多く存在しており、神経伝達物質の合成に欠かせません。また、体温調節に関係する酵素やカタラーゼという活性酸素を処理する酵素の材料としても重要です。粘膜、コラーゲン、ミトコンドリアなどに欠かせない栄養素です。またヘモグロビンは血液濃縮の影響を受けやすく、見かけ上高くなっているだけの人がすくなくありません。血液データ全般から総合して栄養解析をしていく必要があるのです。そのためには、臨床に即した生化学の勉強をしておかなくてはいけません。私の師匠は、まず生化学・生理学の基礎を学び、それから臨床に応用していくようにいつも指導されていました。改めて生化学の本を読みなおそうと思った次第であります。