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抗菌薬の長期使用で肺がんリスクが増加

ソウル国立大学のKim氏らが抗菌薬の長期使用と肺がんリスクの関連を調べたところ、抗菌薬の累積使用日数および種類の数が肺がんリスク増加と関連することが示されたとJournal of Infection and Public Health誌2023年7月号に掲載されました。抗菌薬(抗生物質)を長期間処方されている人を時々見かけます。ニキビ、酒さでMINO系の抗菌薬はよく皮膚科医がよく処方していますし、副鼻腔炎で半年から1年以上抗菌薬を耳鼻科医に処方されている患者さんもよく見かけます。
抗菌薬を使うと腸内細菌叢が乱れるのは知られていますが、近年の研究で、抗菌薬によるマイクロバイオーム異常および腸と肺の相互作用が肺がん発症の引き金になる可能性があるのではないかと考えられています。マイクロバイオームとは、ヒトの体に共生する微生物(細菌・真菌・ウイルスなど)の総体のことです。これらの微生物は、口腔・消化器・鼻腔・呼吸器・子宮・膣など人体が外部環境に接するあらゆる場所には、それぞれ特徴的な微生物群集が常在しています。本来あるべき微生物群集の乱れが起きることで細胞に悪い影響(炎症などによって細胞が傷害される)を及ぼし発癌の因子になっている可能性があります。発癌までに至らなくても、抗菌薬の使用で食道カンジダ、膣カンジダはよく経験します。また皮膚炎悪化の因子でもあります。
なんでもかんでも薬で殺してしまおうという考えはもう古いです。抗菌薬の使用は必要最低限にとどめ、マイクロバイオームをいかに良好に保つかを考えないといけないと思います。そのためにはプレバイオティクスやプロバイオティクスなどの摂取が非常に重要になります。