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起立性調節障害の原因は栄養欠損

起立性調節障害(OD)の関連の記事が最近よく目につきます。朝起きられないのは、心の病気ではなく身体の病気である、という認識になっていることはよいことですが、残念ながらODの原因や治療方法について適切に書いてある記事はありません。成長期によく見られるODは、成長期に栄養の需要が高まり細胞レベルで栄養欠損に陥ることが主な原因なのです。ここをきちんと理解しないと適切な治療ができません。成長期の子どもの殆どは鉄不足もしくは貧血です。身体が大きくなるにはタン白質、鉄がたくさん必要とされるから鉄の貯金が少ないのです。偏食だった場合、さらに鉄不足に陥りやすくなります。パンや麺類中心の食生活をしている家庭も少なくありません。お菓子ばかり食べて空腹感が満たされきちんと食事を摂らない子どももいます。
鉄はエネルギー産生に必要です。血液循環にも影響を及ぼします。脳の神経伝達物質の合成にも欠かせない栄養素です。ですから、頭痛・めまい・立ちくらみ・動悸(どうき)・胸痛・頻脈・だるさ・意欲の低下などの症状が現れます。分子整合栄養医学的には、鉄の貯金フェリチンが50ng/ml未満ですと鉄不足の症状が出る可能性があると考えています。ただ、フェリチンの低さと症状の強さに必ずしも相関があるわけではないのでなかなか診断に至らないのかもしれません。また、フェリチンを増やすには吸収率のいいヘム鉄(動物性の鉄)をかなりの量摂らないといけませんが、保険の鉄にはヘム鉄がありません。保険で処方できる鉄剤は無機鉄なので吸収率が悪く、フェントン反応を引き起こして活性酸素を胃腸内で発生させるため胃腸粘膜を荒らし腹痛・嘔気・下痢・便秘などの胃腸障害を引き起こしてしまうのも問題です。鉄は粘膜の材料としても重要なので、鉄不足の子どもには胃腸の粘膜が弱い子が多いです。そのため、ODの患者さんには平素から腹痛・嘔気を訴えている子も少なくないので無機鉄内服でさらに症状を悪化させてしまうことも少なくありません。
残念ながら短期間でODを改善させる保険適応の治療方法はありません。治療用の設計製造されたヘム鉄の内服が回復への一番の近道になります。