慢性疲労

慢性的な疲労を呈する病態・原因はさまざまです。
原因に応じた治療をしなければいけません。

慢性的な疲労を引き起こす病態には下記のようなものがあります。

① 鉄欠乏

鉄はエネルギーを産生するミトコンドリアの材料なので、鉄不足になるとエネルギーの産生がスムースに行かなくなり「すぐ疲れる」、「眠っても疲れがとれない」、「朝が起きられない」などの症状が出現します。月経過多の女性や肉を食べない菜食主義の方は鉄欠乏になりやすいのは当然ですが、成長期の子供も、身体の成長に伴い鉄の需要が亢進するため男子でも鉄欠乏になります。また成人男性でも胃にピロリ菌感染がある方は鉄欠乏になるケースがありますので、胃カメラをしてピロリ菌の除菌を行うと速やかに鉄欠乏が改善します。

② 機能性低血糖症

血糖値が急上昇・急降下したり低いままでとどまったりして、精神的・身体的にさまざまな症状(疲労感、思考力低下、イライラ、めまい、ふらつき、眼前暗黒、頭痛、朝起きられない)を引き起こす疾患です。
インスリンを過剰に分泌させる糖質(パン、麺類、お菓子)の摂取量が多くタン白質の摂取量が少ない、摂取カロリーが少なすぎる、食事と食事の間隔があきすぎる、などが低血糖の原因になります。

脳以外の細胞は、脂肪酸、ケトン体、アミノ酸などをエネルギー源にすることができますが、脳は主にブドウ糖をエネルギー源としますので、低血糖になると脳が正常に機能しなくなり、精神神経症状を呈します。また血糖が低下すると副腎からノルアドレナリン、アドレナリンなどの血糖を上げるホルモンが分泌されます。これらのホルモンは交感神経緊張ホルモンなので、頭痛、筋肉のこわばり、イライラなどの症状を惹き起こしたり、自律神経のバランスを乱したりします。

機能性低血糖症を正確に診断する場合は、5時間糖負荷試験 (注) を行う必要があります。治療方法は食事療法(小麦粉を断つ、砂糖の入ったものを断つ、消化吸収が緩やかなタン白質を中心にした食事にする、白米は茶碗1膳にする)とセロトニン分泌を増やす栄養アプローチになります。

注:当院では5時間糖負荷試験は実施しておりません

③ 副腎疲労症候群

慢性的なストレス、栄養不足、不規則な生活、過労、低血糖症などによって副腎に長年負担がかかることで副腎が疲弊し、抗ストレスホルモンをうまく分泌できなくなる病態。朝起きられない、うつ、性欲低下、関節炎、皮膚炎、塩分を欲しがる、などの症状が見られます。診断にはDHEA-S (注1) の測定を当院では行っております。高濃度ビタミンC点滴 (注2) や栄養摂取、DHEAの補充、ライフスタイルの見直しなどで治療します。

注1:DHEA-Sの検査は自費で4,000円の消費税になります。
注2:高濃度ビタミンC点滴について:アメリカ製のビタミンCを1回に25~75グラム点滴する治療方法。アンチエイジング、美肌、アトピー性皮膚炎、副腎活性化、免疫活性化、癌治療目的などで実施しています。点滴料金はグラム数によって変わります。11,550円~19,250円。

④ 食物遅延型アレルギー

食べてから半日から数日経って起きるアレルギー反応。皮膚炎、頭痛、微熱、倦怠感などの症状を呈します。IgG検査検査を行ってアレルゲンを同定しますが、日本国内では検査ができないので血液検体をアメリカに送って検査する必要があります。治療はアレルゲンとなっている食べ物を除去するのみ。
検査代は3万円強(為替レートで変動あり)

⑤ リーキガット(腸管漏出症候群)

腸管は免疫活動を担う重要な臓器ですが、腸粘膜を健全に維持するための栄養の不足や腸内細菌叢の乱れによって腸粘膜に隙間ができて、本来免疫反応で排除されるべき異物が体内に侵入することが原因。発熱、倦怠感、皮膚炎、頭痛、関節炎などの症状を呈します。栄養摂取による腸管粘膜の健全化、腸内細菌叢の改善などを行います。検査は、尿中のラクチュロース/マンニトール比の測定になりますが、検体をアメリカに送る特殊な検査なため当院では実施しておりません。

*その他に慢性疲労を呈する原因としては、甲状腺機能低下症や慢性感染症などがあります。

コラム1「鉄不足にはほうれん草を食べましょう」は間違った指導

鉄欠乏性貧血の患者さんに医師や管理栄養士が「ほうれん草やひじきなどをしっかり食べましょう」と指導していますが、これは大間違いです。
確かにこれらの食材には鉄が豊富に含まれていますが、植物に含まれる鉄は全て非ヘム鉄なので吸収率が非常に悪く3~5%くらいしか吸収されません。そのため貯蔵鉄がなかなか増えてくれません。吸収のいい鉄は動物が持っているヘム鉄です。レバーや赤身の肉にヘム鉄が多く含まれていますので、肉を食べない菜食主義の人は鉄欠乏に陥りやすいと言えます。

コラム2摂取するならヘム鉄を

鉄の補給ならわざわざ高いサプリメントでなくても保険の鉄剤でよいのではないかと思われるかもしれません。
しかし、保険の鉄剤は無機鉄なので吸収率が悪くなかなか貯蔵鉄が増えません。無機鉄はフェントン反応を引き起こして活性酸素を発生させる危険な金属なのです。鉄剤を飲むと、胃痛・吐き気・便秘・下痢などの胃腸症状がよくおきますが、これも活性酸素が胃腸の粘膜を障害するためです。ならば鉄剤の注射をすればよいかと思うかもしれませんが、無機鉄の注射はもっと危険で、タン白質と結合できなかった無機鉄は利用されずに肝臓、心臓、膵臓などの臓器に沈着してそこで活性酸素を出し続けます。無機鉄の発生する活性酸素は発癌の因子になります。

市販のサプリメントでもヘム鉄20mg含有などと書いてあるものがありますが、これにもトリックがあります。ヘム鉄パウダーが20mg含まれているのですが、ヘム鉄パウダーの鉄の濃度は1%なので実質ヘム鉄の量は0.2mgしかありません。gdmクリニックで使っているヘム鉄には1粒中8mgの鉄を含有しています。ちなみにレバー100g中に含まれるヘム鉄の量は10mg程度です。