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胃酸を抑える薬は本当に必要ですか?

他院で内科的な治療を受けている方のお薬手帳を見せてもらうことがありますが、かなりの頻度のプロトンポンプインヒビター(PPI)やH2ブロッカーなどの胃酸を分泌を抑制する薬が処方されています。胃酸も当然必要なので分泌されているわけで、これを不必要に抑制するといろいろな問題が生じます。胃酸は食べ物の初期消化に必要ですし、無機鉄やカルシウムの吸収をよくするためにも欠かせません。胃酸は食事中の細菌などを殺菌する作用もあります。胃の部分切除をしている患者さんに胃酸抑制剤を処方しているケースもあります。胃を部分切除したら胃酸分泌が低下しているのに、さらに胃酸を抑制するとタンパク質の消化や鉄やカルシウムの吸収がさらに悪化してしまいます。
昔はピロリ菌が胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃炎の原因であると分かっていなかったので胃酸抑制剤を使うことが多かったですが、今はHP感染には保険で除菌ができるので、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の患者さんは激減しています。なのに昔の名残か、患者さんが胃の調子が悪いと訴えると胃酸抑制剤を処方するという固定概念が多くの医師が持っているようです。胃酸の分泌低下も胃酸の分泌亢進も胃がもたれるというような似た症状がでます。胃酸や消化酵素がちゃんとでていなくて胃もたれしている場合には、胃酸抑制ではなく消化を助ける消化酵素のお薬を処方すべきです。
薬の副作用で胃症状がでるのを予防するために胃酸抑制剤をセットにして処方しているケースもよくみかけます。しかし、以前ピロリ菌感染があり萎縮胃(胃酸分泌低下状態)になっている人に胃酸抑制剤を使うのは前述の理由からよろしくありません。こういう場合は胃粘膜保護剤の方がよいかと思います。
PPIを長期内服している患者さんはカルシウムの吸収が低下して骨粗しょう症になりやすいですしい、認知症の発症にも関係があると言われています。ヒスタミン受容体は脳内にも広く分布しているので、H2ブロッカーに内服で認知症やうつの症状が悪化することがあります。薬は本当に必要な病態に対してのみ使うべきで、漫然と服用すると様々な弊害が起きる可能性がありますので注意が必要かと思います。