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塗り込め詐欺に注意

振込み詐欺の被害が後を絶ちません。判明しているだけでも2021年の被害額は280億円ほどになるそうです。銀行ATMにも注意喚起を促すビラが貼られていますが、いざ自分が当事者になると冷静ではいられなくなるのでしょう。
ところで皆さんは塗り込め詐欺のことをご存知でしょうか?たぶん誰も知らないと思います、私が命名したものですから。以前、10代の子が皮膚炎でgdmクリニックを受診しました。4~5軒ほど皮膚科を転々をされていました。皮膚炎や湿疹で皮膚科を受診すると、ステロイド軟膏かプロトピック軟膏しか処方されません。塗るといったんよくなりますが、免疫抑制剤なので止めるとリバウンドします。当然の反応なのですが、薬の仕組みや副作用を知らない一般の方は、塗るのをやめても悪化しない治療を求めて別の皮膚科を受診することはよくあることです。しかし、普通の皮膚科ではリバウンドしない治療方法など提供していません。その患者さんもリバウンドして悪化すると別の皮膚科に行っていたようです。gdmクリニックを受診する前の前の皮膚科の先生に、「ステロイドではよくならないのでステロイドは処方しません」と言われたそうです。いい先生だと私は思うのですが、患者さんとしてはすぐによくなる治療を提供してもらいたいと思うので、そこのいい先生の皮膚科には通わずに、近隣に行く皮膚科もなくなったので小児科を受診されたそうです。小児科医はあまり強い薬を処方しない印象があるのですが、そこの小児科ではステロイド数種類とそれにプラスしてプロトピック軟膏を処方され、顔にたっぷりと塗り込めと指導されたとのこと。言われた通りに塗っているとみるみるうちに悪化し顔が真っ赤になっていまい、怖くなって塗るのをやめたそうです。gdmクリニックを受診した時はちょうど塗るのをやめて2週間ほど経っていたので、リバウンドのピークでもありました。ステロイドが原因のかぶれ(接触性皮膚炎)やプロトピックによる皮膚の赤みや灼熱感などが相まって顔の赤みが増悪したのではないかと思いました。ステロイドはアレルギー反応を抑える薬ですが、逆にステロイドがアレルギー反応を引き起こすケースもあるのです。
発赤、炎症が強い場合は、一時的にステロイドでジュクジュクした皮膚炎を治したほうがいいケースがあるのは確かです。しかし、薬には多かれ少なかれ副作用がある(特にステロイドやプロトピックには)ので、やめることを前提に薬の反応を確認しながら早期に離脱するような治療やアドバイスをすべきだと思います。しっかり塗り込めという指導を真面目に聞いたのに逆に症状を悪化したら患者さんとしては騙された(塗り込め詐欺)と思っても不思議ではありません。医師としても悪化させてやろうと思って薬の処方したわけではないのですが、薬の副作用についてもっと配慮すべきです。